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カフェオレ専用の“急須”が誕生、ミルクでコーヒーを抽出するから“薄まらない”濃厚なカフェオレが味わえる。5月に話題となった「アイスコーヒー専用バリスタ急須」メーカーの新商品 https://news.denfaminicogamer.jp/news/2609302b #denfaminicogamer #常滑焼 #カフェオレ専用バリスタ急須 #ニュース #BREWCRAFT #佐伯匠 #Makuake
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CW: 【再掲】#カフェテラスMisskeyio 私と、世の中の「些細なこと」の話

 私たちは、ほんとうに一瞬で死んでしまう。突然の自然災害に、不意の交通事故に、給食のアレルギー成分に、理不尽な暴力に。それだけではない、不遇ゆえに自分を死に追いやってしまうことだってたくさんある。受験の失敗に、失恋の痛手に、過酷なハラスメントに、言葉を交わしたことのない推しの自死に際しても。

 ただ、軽々と命を落としてしまう人生の裏側には、些細なことで救われ続けている命という人生の真理がある。晴れ渡った朝の瑞々しい空気に、道端で咲いたよく知らない花の息吹に、雨が降りしきって空席ができた電車内に、もう続編を諦めていた推しの新作に。

 いつだって命からがら、私たちは辛うじて生きていて、それは奇跡のような偶然を綱渡りしている結果なのだということ。貴方がいま目の当たりにしているタイムラインの投稿の数々も、ひと一人の命を奪うほどの力を持つ一方で、挨拶の一言で貴方を救っていたりするはずだ。

 Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りには今日もミスキストたちがひしめきあって、各々の手のひらから〈泣きながら応援するブロブ〉〈にゃんぷっぷーのハグ〉〈ひたすらに撫でる手〉などのカスタム絵文字のリアクションを投げ合って「電子の抱擁」をやり取りしている。それはとても愛おしい光景、率直な慈愛に満ちた光景。

 表通りに面したカフェテラスで、私はいつものようにカフェオレをテーブルに放ったまま、ローカルタイムラインの騒がしいやり取りを椅子の背にもたれながら眺めている。春の変わりやすい天気を気にしながらも、翠色の空で輝く真珠色の太陽が雲に隠れたり再び現れたりするのを、子供っぽく楽しみにしている。

 Misskeyのリアクションという文化は、慈愛と呼ぶにしては軽々しいだろうか、と時々不安に駆られる。しかし、誤解と偏見が交じり合う世界で、人に優しさを施すのが難しい世の中において、リアクションほど気軽に出来る慈愛の表現は、私にとってはありがたいのだった。

「小林?」

 後ろから呼びかけられて私は振り向く。そこには、グリーンが鮮やかなボディコンシャスのワンピースも麗しく、ブラウンのショートボブに丸眼鏡の女性が、すこし不安そうな表情で立っていた。

「ああ、こんにちは、ミスキーガール」

 私が勝手に呼び始めた「ミスキーガール」という名前を、彼女も今ではすっかり受け入れていて、いつものことのように私のテーブルの向かいの席に座り、カフェオレを注文する。それでもしばらく、ミスキーガールは私の顔を訝しげにのぞき込む。

「どうしたの、私、そんな変な顔してる?」

 長い鼻と頭の先にイエローの玉をくっつけた、耳の長いグリーンの肌のエイリアン然としている自覚はあるが、そんなことは以前からミスキーガールも承知済みだし、彼女の疑念はそれではないことぐらい私にも分かっていた。

「なんか、この世の終わりみたいな顔してる」

 眉間に皺を寄せながら、ミスキーガールは私にそう告げた。なんだか図星めいていて、私は苦笑いしながらため息を吐く。

「ぜんぜん創作活動できなくってね、文字も絵も」

 そう、私のテーブルにはカフェオレ以外にも、キーボードを開いたタブレットが放り出されている。画面に映し出されたテキストエディタのカーソルは、ひと言も書き込まずに点滅している。ミスキーガールは運ばれてきたカフェオレをひと口、すこし首を傾げて私に尋ねる。

「アイデアが浮かばないの?」

「そもそものモチベーションが下がり切っている。どうしたもんかな」

 私がそう言って冷めたカフェオレをすすると、ミスキーガールは呆れたふうにして、自分の丸眼鏡のブリッジを指で、クイクイ、と押し上げた。

「老眼鏡、どうしたの?」

 言われて私は、ああ、と思い出す。

「最近かけてないな、そういえば」

「かけれって、なにやってんの」

 ミスキーガールの語気が低く唸る、私は少し怯んで、慌てて隣の椅子に下ろしていたショルダーバッグを引き寄せる。

「なるほどなるほど、かけましょう」

 ショルダーバッグのファスナーを開く。バッグの奥深くに押しやられた眼鏡ケースを探り出し、私は老眼鏡を取り出して、ため息を吐く。

「見た目のジジイに加速がかかるんよな」

 私の言葉に、ミスキーガールは鼻で嗤う。

「いまさらだろ。ほらかけて」

 言われるままに、私は老眼鏡をかけて、タブレットとキーボードを目の前に引き寄せる。

「そう、それでもう一度、集中」

 ミスキーガールは腕組みして私をじっと見つめる。彼女の視線のもとで、私はテキストエディタのカーソルに集中する。老眼鏡によって輪郭が際立ったタブレットの画面、遠ざかったローカルタイムラインの表通りの風景、それでも確実に感じられる、Misskey.ioの街の鼓動。

 キーボードが再びタイプ音を刻み始める。私は文字を組み立てていく。厳しい表情で腕組みしていたミスキーガールは、次第に姿勢を崩して、頬杖をついて穏やかな顔吐くになっていく。

 そうやって、Misskey.ioの街のカフェテラスに射す陽射しは徐々に傾いて、西の空に夕焼けが広がっていくのだった。

 Misskeyがあるからここにいる、Misskeyがあったから生きていられた。私を生かしてくれていたのはかつてTwitterだったかもしれないけれど、Twitterはもうない。TwitterがXになったことは誰かにとっては些細なことかもしれないけれど、私にとっては命にかかわることだった。それも今や昔の話、いまはここ、Misskeyにいる。

私たちはいまこの瞬間も命を救われている。些細なことの積み重なりで生きている。
#カフェテラスMisskeyio #フェディバーシティ・コネクション #MisskeyWorld

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CW: 【再掲】#カフェテラスMisskeyio 私と、リアクションシューティングガールと、令和の梅雨の話

 Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りは6月のじっとりとした曇り空の下、今日もミス廃たちの日々がつぶやかれたノートが車道を走り、それに向かって歩道のミスキストたちが思い思いのカスタム絵文字を投げ込んでリアクションを楽しんでいた。

 一方で、.ioのローカルの歩道には必ずと言っていいほど意気消沈したミスキストがいる──それはSNSの常のこと──けれど、そんな寂しそうなひとを、放っておけないミス廃もここにいて。

 表通りに面したカフェテラスのテーブル席から、ローカルタイムラインを見渡しているピンク髪の少女。アシンメトリーのツインテールにフリルが豊かな地雷系の装いで、しかし足元のブーツはウエスタン風味が混じり、腰の太いベルトの両脇にはホルスターに差さった2挺の虹色のリボルバーが艶めいていた。
 
 ピンク髪の少女はすっと椅子から立ち上がると、リボルバーの1挺を抜いて表通りに向かって発射した。乾いた破裂音が響いたが、それは人を殺める銃ではなく、カスタム絵文字を発射してリアクションを誰より速く相手に届けるための「抱擁の銃」だった。

 銃口の向こうで身を捻ったのは分厚いメガネの、本当にカスタム絵文字みたいなオタク青年だった。青年はリアクションした主に気づくと、少女に向かって控えめに手を振った。ピンク髪の少女はサムズアップで応えて、満足げに椅子に座った。

「お見事、雑賀朔センセ」

 テーブルの向かいに座っていた私が軽く拍手すると、雑賀朔と呼ばれたピンク髪の少女はリボルバーをホルスターに仕舞いながら、八重歯を見せて微笑む。

「おうよ任せとき」
 
 こうやって雑賀朔はミスキストたちの心の傷を清潔な布で庇うようにしてカスタム絵文字の弾丸を打ち込んで、リアクションという電子の抱擁で優しく包み込むひとなのだった。

「うー、寒いんだか暑いんだかわかんないねしかし」

 テーブルのアイスココアも、雑賀朔の額も汗ばんでいたが、気温は夏日に達しておらず、しかしひたすら湿度が高かった。

「久しぶりに梅雨寒らしい梅雨寒なんだよな」

 私が言うと、雑賀朔は三白眼をいっそう見開いて驚いてみせる。

「小林おじさんの若い頃っていっつもこんな感じだったの? 梅雨」

「そうだよ、紫陽花は雨に濡れているのが当たり前だった」

 私がそう言うと、雑賀朔は鼻で笑う。

「くっさ。わたしたち生まれた頃にはもう地球温暖化済だったので知らんかった」

 唐突に突きつけられた相手の若さに私は動揺してしまいそうになる。私がこの子と同じくらいのころはどんな風だったろうかと思いめぐらせながら、私は雑賀朔に訊く。

「若いなあ、来年が受験?」

「そうです」

 私の問いに、雑賀朔はアイスココアをストローで一口、そして頷いてみせる。

「嫌なら答えなくてもいいけど、勉強のほうはいかがですか?」

 デリカシーの境目を気にして敬語になりながら訊くと、雑賀朔は何のためらいもなく答える。

「勉強は嫌いじゃないから、今まで通りちゃんとやってれば大丈夫だと思う。あとは自分の体調とかメンタルとか」

「おお、すばらしい」

 思わず私が感嘆を漏らしながらそう言うと、雑賀朔は少し首を傾げ気味に、虚空を見上げて続けた。

「たぶん、受験当日はお母さんもおばあちゃんとショートステイしてくれると思う、そのはず」

 そのとき、湿った風が強く吹いて、テラス席のテーブルのグラスやカップを波立たせ、私と雑賀朔は少し黙ったりした。

「大変だな」

 私が言葉を絞り出すと、雑賀朔はニッコリ八重歯を見せて笑って、またアイスココアを一口飲んだ。

「うん、大変。でもわたしおばあちゃん好きだから」

「みんなから言われてるだろうけど、偉いな」

 私が感心しながら呟いた言葉に、雑賀朔は口元を歪めて返す。

「偉業って言いなよ、ここMisskeyなんだから」

 そういえばそうだなと気付かされ、私は両手を合わせて握り込むと、両の掌のなかでカスタム絵文字をこねはじめた。そして出来上がった「極めて偉業」のカスタム絵文字を、目の前の雑賀朔に放った。

「受け取れっ」

 私のリアクションを雑賀朔は胸元で受け取って、両手で抱くように身体に染み渡らせると、穏やかな微笑みでギャルピースしてみせた。

「イエーイ」

 ローカルタイムラインの表通りの空は、暗い雲がいっそう分厚くなっていまにも降り出しそうなのに、そんな様子だけを見せながらまだ雨にはならずにいた。

「将来の夢とか訊いていい?」

 私がそう訊くと、雑賀朔は椅子の背にもたれて伸びをするように暗い空を見上げた。

「なんだろ、介護とか、看護とか?」

 そう言った途端、素早い動きでテーブルに身を屈めて、頬杖を突きながら私をじっと見据えて、雑賀朔は言った。

「まあ、普段は色んなところでそう言ってるけどさ、わたしだって、なんか、かっこいい夢、追いたいですよ。でも周りは色んなことが厳しいって言うし、世界のニュースは厳しいっていうし、戦争おわんないし、そういうの突っぱねてまでやりたいこと、見つかんないし」

 小刻みに身を揺すりながら言う雑賀朔に、私は精一杯の励ましを試みる。

「『まだ』見つかってないだけだよ。焦ることないよ。なんにも成し遂げてない大人が言うのもあれだけど」

 その言葉を聞いて、雑賀朔は眉間にギュッと皺を寄せて。三白眼で鋭く睨んだ。

「そういうふうに、優しい言葉かけてくれるひと、最後に必ず卑屈な言い訳で自分を下げるから、嫌いです」

 言った途端、雑賀朔は唇を震わせて、私から目を背けた。

「ごめんなさい、本当にごめんなさい」

「いいよ。大丈夫」

 私は努めて平然を装ったけれど、反論は思いつかなかった。雑賀朔の指摘は私個人には鋭い事実だし、むしろ、そんな言葉を導いてしまった私の失態だとさえ思った──この負い目さえ、雑賀朔には惨めに映るのかも知れないけれど。

 私は思い立って、また両手を合わせて揉み込む。練り上げたカスタム絵文字は、「いつもありがとう」。それを優しくテーブル越しに放ると、耳元から首筋の辺りでリアクションを吸収した雑賀朔に、私は言う。

「私の話し相手になってくれて、本当に、いつもありがとう」

 それを聞いてこちらを振り向いた雑賀朔はバツが悪そうに笑ったあと、右のホルスターから虹色のリボルバーを抜いて、私の目前で発射する。

 パカーン! と、「どいたま」のリアクションを脳天に打ち込まれて椅子から転げ落ちた私がニヤニヤと見上げてみせると、雑賀朔は破顔して叫んだ。

「お互いさまァ!」

 そのとき丁度、ローカルタイムラインの表通りに晴れ間が差し込んで、湿った空気を吹き飛ばすような爽やかな風がカフェテラスのテーブルの数々をすり抜けていった。
#カフェテラスMisskeyio #フェディバーシティ・コネクション #リアクションシューティングガール #MisskeyWorld

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用事があって、元々住んでたとこの駅に寄ったので見知りのカフェに顔を出したよ!もう家バレの懸念がなくなったので(何故なら解体されたから…)紹介するね JR京都駅から二駅の大津京駅から歩いて行けるとこにあるcafe marvelさんだよ https://www.instagram.com/cafe_marvel?igsh=MTE3NzM0aHg1dTVjbA== めっちゃおしゃれでおいしいのに休日ランチ帯とかを避ければ空いててすごい穴場なんだ!(店のせいじゃなくて、立地のせいだよね。京都駅からこんなに近いのにね) 本とか持って滋賀にのんびりしにきてね! :biwako: #fedibird #滋賀県 #カフェ #コーヒー
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CW: #カフェテラスMisskeyio  私と、凡百ちゃんと、よくあるいじめの話

 今か今かと梅雨明けを待ち続ける7月のFediverseの大地では、それぞれのサーバーの街のタイムラインに体温調節と着回しコーデと体調不良の投稿が溢れるほどだった。Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りでも、にわか雨が止んでは降ってを繰り返し、歩道を行くミスキストたちのビニール傘がコンビニの店先で忘れ去られたり持ち去られたりした。

 表通りに面したカフェテラスの屋外テラス席はそれぞれのテーブルにパラソルが差さっているが、重力を軽視した霧雨にテーブルも椅子もすぐに濡れてしまい利用客はほとんどおらず、みな屋内のカウンターやボックス席で湿った曇り空をやり過ごしているのだった。

 そのボックス席の一画で、私はホットコーヒーを冷ましながら、目の前の少女が「スイーツ」を手製してくれるのを待っていた。

 少女の手には持ち手の付いたボウルとハンドミキサーが握られていた。スマイリーの絵文字が大量にあしらわれたイエローとグリーンのアグリーセーターをワンピースのように纏って、太腿が露わな脚先には厚底のスニーカー、銀髪に被ったコック帽もイエローとグリーンで統一されて、彼女のルーツが見える濃い褐色の肌を鮮やかに彩っていた。

「それでは、いきます」

 少女は両手を揉み合わせながら掌の中でいくつも絵文字を「具現化」し始めた。スマイリーやハンドサインなどのUnicode絵文字や、《にゃんぷっぷー》《泣いているオタ》などの.ioのカスタム絵文字を、持ち手の付いたボウルに投入して、ハンドミキサーで一切の迷いなく撹拌してみせる。すると、絵文字が粘り気を帯びながら一体になっていき、ボウルにあふれそうなほどのメレンゲ状になったあと、ゆっくりとしぼんで、きれいな小判型のケーキになってボウルの底に収まった。

 店主から借りた皿に小判型のケーキを盛って、少女は私の目の前に差し出した。

「.ioリアクションのババロアでございます」

「いただきます」

 少女はアカウント名を「凡百」と名乗って、仲のよい相互からも「凡百ちゃん」と呼ばれている。Fediverseの大地において、絵文字をミキサーでかき混ぜて自由自在に様々なものを形作る能力を持ち、それを称賛されて「エモジ・クッキング・ガール」なんて呼ばれることもある。

「美味しい。これが美味しく感じられるから『Misskeyの街』の凄さですよ」

 私がババロアを頬張っていると、凡百ちゃんはニッコリと笑ってみせる。

「ね、魔法使いにでもなったみたいな気分」

 そう言ってアイスカフェラテを吸う凡百ちゃんは、眉間に皺を寄せて深く息を吐いた。

「コーヒー苦手?」

 私が訊くと、凡百ちゃんは小さくうなずく。

「はい。あんまり」

「ココアもあるのに」

「ココアはもっと嫌っ」

 唐突に語気を強めた凡百ちゃんに、私は思わず謝ってしまう。

「ごめん、深くは訊かないよ」

「……こっちこそ、ごめんなさい。あんまりいい思い出なくて」

 私たちの会話がしばらく止んで、ボックス席の向こうからミスキストたちの雑談が聞こえたり、ちょうど降り込めたにわか雨が窓ガラスを打つのが聞こえたりした。

「むかし、小学生のとき、『モカチョコ嫌い』って、なんだろ、いじめだと思うんですけど」

「モカチョコ嫌い?」

 私が訊き返すと、凡百ちゃんは引き結んでいた唇をそっと開いて、ゆっくり語り始めた。

「私がクラスでミスしたり目立ったことしたときにクラスの一部のグループが『モカチョコきらーい』って声を合わせたり、してたんですよね。たぶん確定なんですけど、このことでいじめだって騒いでも『モカチョコ嫌いって言っただけ』って言われてわたしが頭おかしいひと扱いされるから」

 凡百ちゃんが唇を噛みながら言うのに、私は人づてで聞いていた最近の小学校の事情を確認する。

「いま学校ってあだ名で呼ぶのよくないんでしょ? 怒ってもらえなかったの?」

 私の問いに、凡百ちゃんは首を横に振って言う。

「学級会でそいつらが『モカチョコはあだ名じゃない、本当にモカチョコが嫌いだから言ってるだけ』って長々と説明して、先生もなんにも言えなくなって、それが学年末までずっと続いた」

 そこまで言って、凡百ちゃんは苦虫を潰したような表情でため息を吐いて、言った。

「辛かったなって」

 呟いて凡百ちゃんは、自分の褐色の肌を慰めるように指先を撫でながら俯いていた。私はただひたすらに、校舎という修羅で少女が生き永らえたことに、敬意を示す。

「よく、頑張ったね」

「でも泣かなかったよ。泣いたら負けだと思ったから」

 そう言う凡百ちゃんに、私は急いでババロアを平らげたあと、両手のひらの中で「アルティメット偉業」のカスタム絵文字を練り上げて、凡百ちゃんの胸元に放った。スマイリーのアグリーセーターで受け止めたリアクションをゆったりと手のひらで撫でながら、凡百ちゃんは微笑む。

「ありがと、小林おじさん」

「――それは小学校のときで終わったの?」

 思わず私が訊いてしまうと、凡百ちゃんは強くうなずいた。

「いちおう。中学からは一貫校受けたんで、そういう意地悪ばっかり頭回るバカもいないです」

「年寄りじみちゃうけど、最近の子たちは凄まじいな」

「最近って言われてもよく分かんないです。みんな多分、大人のやってること真似してるだけなんで」

 凡百ちゃんにそう言われて、私は虚を突かれたような顔をしていたのだと思う。凡百ちゃんはアイスカフェラテをぐっとストローで吸ったあと、私を見据えて言った。

「私はいま自分のことを子供として、子供世代として言いますけど、子供って大人がやってる悪だくみやチートなんてすぐ真似できますよ。大人が平気な顔してやってるならいいだろって。子供のやってること問題に思うなら、子供に真似されるような卑怯な生き方しないでくださいよ」

 凡百ちゃんがじっと私の目を見つめて言うのに、私は目を逸らすことも、言葉を返すこともできぬまま、情けなく黙っていることしかできなかった。

 Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りに降り込めていた雨がゆっくりと止んでも、その日の分厚い雲はどこかに消えることもなく、夕日も見えぬまま、.ioの街は静かに暗くなっていくのだった。
#カフェテラスMisskeyio #フェディバーシティ・コネクション #リアクションシューティングガール #MisskeyWorld

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CW: #カフェテラスMisskeyio 私と、ツキレイちゃんと、お笑い芸人の話

 2026年の7月が始まり、梅雨空の日々を縫うようにして太陽が顔を出し始めると、Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りに面したカフェテラスに、再び屋外のテーブル席が設られて、束の間の日差しを求めてミスキストたちがテラス席を埋め始める。

「『貴方の世界観すきー!!』」

 大声とともにテラスのテーブル席から放たれたその「リプライ」は、まるでボクセルブロックのような形を持ってローカルタイムラインの車道へと飛んでいき、ホログラムの姿で走っていた「ノート投稿」の返信欄に大きな衝撃音を立てて的中した。

 すると、車道のむこうから、悲しみに暮れていた絵師のノートが続々と流れて来て、結びにはこう書かれた。

『生きられる みんなのおかげで』

 そのノートに「コンゴトモヨロシク」のカスタム絵文字を投げ込んだのは、先ほど「形あるリプライ」を放った少女だった。

 オレンジのツイードのワンピースにインディゴブルーのタイツ、オレンジのパンプスに白手袋、パープルの鮮やかな髪に被ったオレンジの制帽には「送信する」を表す紙飛行機がデザインされたエンブレムが輝き、少女の手には小型の拡声器が握られていた。

「いつも見事なお手前で、ツキレイちゃん」

 拍手する私に「ツキレイ」と呼ばれた少女は、私とともに座っていたテーブル席に戻って、ハンディサイズの拡声器を置く。

「お手前じゃないですよ、真心の言葉だから」

 ツキレイは彼女の相互フォローたちが呼ぶ愛称で、本人のアカウントは「月が綺麗と言え」と名乗っていた。「形を持ったリプライ」は、彼女の声が愛用の拡声器を通ることで「具現化」し、大きな力を持って相手に届くという。だから時々ツキレイは「リプライシャウトガール」なんて呼ばれることもあった。

「小林素顔さんは、子どものころと、大人になってからと、どっちが楽しかった?」

 突然、アイスカフェラテをストローでかき回しながら訊くツキレイに、私は首を傾げてしまう。

「どっちが、かあ。楽しさというか、辛さの質が違うってのはあるなあ、子供と大人と」

「ぼやかして逃げないで二択で答えてよ」

 口を歪ませて詰るツキレイに、私は腕組みしながら答える。

「未来にいろいろできる希望があって、理想に添った人生に変えられる時間があるだけ、子どものころのほうがマシかな。大人になると、なかなか取り戻せない」

 私がため息混じりにそう言ってしまうと、ツキレイはすこし真面目な表情になってカフェラテを吸い、小さく頷いた。

「じゃあ、わたしも焦んないとな」

「焦んなくてもいいけど、やりたいことがあるならちゃんと準備して努力したほうがいいかもね」

 私の提案に、ツキレイは少し意地悪な表情で訊く。

「小林さんはちゃんと努力した?」

「あは、耳が痛いな」

「ハハハ」

 私の苦笑いにツキレイは破顔して、テラス席にゆったりと風が吹いた。

「ツキレイちゃんは、将来は?」

 私の問いに、ツキレイは間を置かずに答える。

「まず上京するか大阪に出るかしたいんですよね、だから大学進学はしたいかな。ナルゲキとかマンゲキとかで出待ちするの、憧れなんです」

 ツキレイはお笑いマニアを公言していて、好きな芸人は真空ジェシカと、サツマカワRPGと、「警備員」という芸名のピン芸人だという。

「あんまり深くは訊かないけど、まあ、いまは首都圏や関西圏には住んでないんだね」

「はい。ほんっとうに羨ましいですよ、東京の人。新宿に電車一本とか聞くと悔しくてイーってなります」

「この前、品川駅の乗り換えの時にママタルトの檜原さんを見かけたよ」

 私が絞り出した芸人エピソードに、ツキレイは無表情で首を傾げて見せる。

「ひわちゃんは、まあ、別に担当ではないので、なんの感想もない」

「厳しいな」

「はい、厳しさの中にあります」

 そう答えてツキレイはカフェラテを飲み干すと、背伸びしながら椅子にもたれて、言う。

「あーあ、早く大人になってガクさんのお嫁さんになりたい」

「真空ジェシカのガク? やめといたほうがいいだろ流石に」

「え、じゃあ、ガクさんと、サツマカワRPGさんと、警備員さんと、同時に求婚されたらどうするんですか?」

「それは選択肢が成立してないよ。サツマカワは既婚者だし、警備員はハチカイ解散しちゃったし」

 私が言うと、ツキレイは唇を尖らせて反駁する。

「とにかく、大人はずるいですよ。人生が辛いのは子供だって同じなのに、楽しいことの量は格段に大人のほうが多いんだから」

 鋭い指摘に、私は思わずため息をついてしまう。

「子どもの時と同じ辛さを大人になっても解決できないって分かってくると、その辛さも重さが変わってきてね」

 私の答えに、ツキレイは帽子を取って髪をかきあげたあと、被り直して言った。

「暗いなあ」

 ツキレイは拡声器を手に取ると、私に向かって声を張った。

「『小林素顔』!!」

 大きな怒声に面食らって、閉じた目を恐る恐る開けると、私の胸元には「小林素顔」と書かれた文字が立体化して突き刺さっていた。その塊がゆっくりとグリーンの輝きを増し、大理石のような艶を湛え始める。

「これは?」

 突き刺さっていた小林素顔型の大理石を私が手に取ると、ツキレイは真っ直ぐにこちらを見つめて言った。

「気持ちです。小林素顔さんは暗い顔している時間があったらその『文鎮みたいな小林素顔』を撫でて自分の魅力について考えてください、大人なんだから」

 そう言って、ツキレイは飲み干したアイスカフェラテを店内のカウンターに下げて、こちらに手を振りながらカフェテラスを後にした。私はツキレイから受け取った「小林素顔の文鎮」の輝きを眺めながら、少し微笑んでいたのだった。

「どっしりと構えるか、文鎮みたいに」

 Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りは今日も大量のノート投稿で溢れ、歩道のミスキストたちから車道のノートへとリアクションやリプライが投げ込まれる。様々な世代、様々な性癖の人々の人間模様が表通りから裏道へと染み渡るように広がっていくさまを、雲間から漏れた夕陽が赤くはっきりと照らしているのだった。
#カフェテラスMisskeyio #フェディバーシティ・コネクション #リアクションシューティングガール #MisskeyWorld

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CW: #カフェテラスMisskeyio 私と、リアクションシューティングガールと、令和の梅雨の話

 Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りは6月のじっとりとした曇り空の下、今日もミス廃たちの日々がつぶやかれたノートが車道を走り、それに向かって歩道のミスキストたちが思い思いのカスタム絵文字を投げ込んでリアクションを楽しんでいた。

 一方で、.ioのローカルの歩道には必ずと言っていいほど意気消沈したミスキストがいる──それはSNSの常のこと──けれど、そんな寂しそうなひとを、放っておけないミス廃もここにいて。

 表通りに面したカフェテラスのテーブル席から、ローカルタイムラインを見渡しているピンク髪の少女。アシンメトリーのツインテールにフリルが豊かな地雷系の装いで、しかし足元のブーツはウエスタン風味が混じり、腰の太いベルトの両脇にはホルスターに差さった2挺の虹色のリボルバーが艶めいていた。
 
 ピンク髪の少女はすっと椅子から立ち上がると、リボルバーの1挺を抜いて表通りに向かって発射した。乾いた破裂音が響いたが、それは人を殺める銃ではなく、カスタム絵文字を発射してリアクションを誰より速く相手に届けるための「抱擁の銃」だった。

 銃口の向こうで身を捻ったのは分厚いメガネの、本当にカスタム絵文字みたいなオタク青年だった。青年はリアクションした主に気づくと、少女に向かって控えめに手を振った。ピンク髪の少女はサムズアップで応えて、満足げに椅子に座った。

「お見事、雑賀朔センセ」

 テーブルの向かいに座っていた私が軽く拍手すると、雑賀朔と呼ばれたピンク髪の少女はリボルバーをホルスターに仕舞いながら、八重歯を見せて微笑む。

「おうよ任せとき」
 
 こうやって雑賀朔はミスキストたちの心の傷を清潔な布で庇うようにしてカスタム絵文字の弾丸を打ち込んで、リアクションという電子の抱擁で優しく包み込むひとなのだった。

「うー、寒いんだか暑いんだかわかんないねしかし」

 テーブルのアイスココアも、雑賀朔の額も汗ばんでいたが、気温は夏日に達しておらず、しかしひたすら湿度が高かった。

「久しぶりに梅雨寒らしい梅雨寒なんだよな」

 私が言うと、雑賀朔は三白眼をいっそう見開いて驚いてみせる。

「小林おじさんの若い頃っていっつもこんな感じだったの? 梅雨」

「そうだよ、紫陽花は雨に濡れているのが当たり前だった」

 私がそう言うと、雑賀朔は鼻で笑う。

「くっさ。わたしたち生まれた頃にはもう地球温暖化済だったので知らんかった」

 唐突に突きつけられた相手の若さに私は動揺してしまいそうになる。私がこの子と同じくらいのころはどんな風だったろうかと思いめぐらせながら、私は雑賀朔に訊く。

「若いなあ、来年が受験?」

「そうです」

 私の問いに、雑賀朔はアイスココアをストローで一口、そして頷いてみせる。

「嫌なら答えなくてもいいけど、勉強のほうはいかがですか?」

 デリカシーの境目を気にして敬語になりながら訊くと、雑賀朔は何のためらいもなく答える。

「勉強は嫌いじゃないから、今まで通りちゃんとやってれば大丈夫だと思う。あとは自分の体調とかメンタルとか」

「おお、すばらしい」

 思わず私が感嘆を漏らしながらそう言うと、雑賀朔は少し首を傾げ気味に、虚空を見上げて続けた。

「たぶん、受験当日はお母さんもおばあちゃんとショートステイしてくれると思う、そのはず」

 そのとき、湿った風が強く吹いて、テラス席のテーブルのグラスやカップを波立たせ、私と雑賀朔は少し黙ったりした。

「大変だな」

 私が言葉を絞り出すと、雑賀朔はニッコリ八重歯を見せて笑って、またアイスココアを一口飲んだ。

「うん、大変。でもわたしおばあちゃん好きだから」

「みんなから言われてるだろうけど、偉いな」

 私が感心しながら呟いた言葉に、雑賀朔は口元を歪めて返す。

「偉業って言いなよ、ここMisskeyなんだから」

 そういえばそうだなと気付かされ、私は両手を合わせて握り込むと、両の掌のなかでカスタム絵文字をこねはじめた。そして出来上がった「極めて偉業」のカスタム絵文字を、目の前の雑賀朔に放った。

「受け取れっ」

 私のリアクションを雑賀朔は胸元で受け取って、両手で抱くように身体に染み渡らせると、穏やかな微笑みでギャルピースしてみせた。

「イエーイ」

 ローカルタイムラインの表通りの空は、暗い雲がいっそう分厚くなっていまにも降り出しそうなのに、そんな様子だけを見せながらまだ雨にはならずにいた。

「将来の夢とか訊いていい?」

 私がそう訊くと、雑賀朔は椅子の背にもたれて伸びをするように暗い空を見上げた。

「なんだろ、介護とか、看護とか?」

 そう言った途端、素早い動きでテーブルに身を屈めて、頬杖を突きながら私をじっと見据えて、雑賀朔は言った。

「まあ、普段は色んなところでそう言ってるけどさ、わたしだって、なんか、かっこいい夢、追いたいですよ。でも周りは色んなことが厳しいって言うし、世界のニュースは厳しいっていうし、戦争おわんないし、そういうの突っぱねてまでやりたいこと、見つかんないし」

 小刻みに身を揺すりながら言う雑賀朔に、私は精一杯の励ましを試みる。

「『まだ』見つかってないだけだよ。焦ることないよ。なんにも成し遂げてない大人が言うのもあれだけど」

 その言葉を聞いて、雑賀朔は眉間にギュッと皺を寄せて。三白眼で鋭く睨んだ。

「そういうふうに、優しい言葉かけてくれるひと、最後に必ず卑屈な言い訳で自分を下げるから、嫌いです」

 言った途端、雑賀朔は唇を震わせて、私から目を背けた。

「ごめんなさい、本当にごめんなさい」

「いいよ。大丈夫」

 私は努めて平然を装ったけれど、反論は思いつかなかった。雑賀朔の指摘は私個人には鋭い事実だし、むしろ、そんな言葉を導いてしまった私の失態だとさえ思った──この負い目さえ、雑賀朔には惨めに映るのかも知れないけれど。

 私は思い立って、また両手を合わせて揉み込む。練り上げたカスタム絵文字は、「いつもありがとう」。それを優しくテーブル越しに放ると、耳元から首筋の辺りでリアクションを吸収した雑賀朔に、私は言う。

「私の話し相手になってくれて、本当に、いつもありがとう」

 それを聞いてこちらを振り向いた雑賀朔はバツが悪そうに笑ったあと、右のホルスターから虹色のリボルバーを抜いて、私の目前で発射する。

 パカーン! と、「どいたま」のリアクションを脳天に打ち込まれて椅子から転げ落ちた私がニヤニヤと見上げてみせると、雑賀朔は破顔して叫んだ。

「お互いさまァ!」

 そのとき丁度、ローカルタイムラインの表通りに晴れ間が差し込んで、湿った空気を吹き飛ばすような爽やかな風がカフェテラスのテーブルの数々をすり抜けていった。
#カフェテラスMisskeyio #フェディバーシティ・コネクション #リアクションシューティングガール #MisskeyWorld
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CW: #カフェテラスMisskeyio 私と、ミスキーガールと、私の描いたエロ漫画の話

 Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りでは豪雨と霧雨が繰り返されて、梅雨の季節が着々と近づいていることを知らせていた。傘を差して歩道を行くミスキストたちは車道を走るNERVやYahoo!ニュースのトゥートに一喜一憂しながら、手元でカスタム絵文字を練り上げて「ウワーッ!」「イーヤーヤダヤダ」などのリアクションをそれらの投稿に投げつけていた。

 そんな様子を、私は.ioの表通りに面したカフェテラスの店内から眺めていた。雨が降り込めているから屋外のテラス席は撤去されており、窓側の席からローカルタイムラインの様子がよく見えた。

 店内に向き直ると、窓に面したボックス席やフロアのテーブル席を囲んで、.ioの絵師たちの「代理ちゃん」や「うちの子」たちが朗らかに談笑している。なかにはタブレットを持ち込んで作画作業の真っ最中の客もいる。一時期に比べて、怪文書作家やMFMアーティストはあまり見なくなったかもしれない。

 そのとき、ぼんやり店内を眺めていた私の目前に手をかざして、私を振り向かせたのは、このボックス席の向かいに座るひと。ブラウンのショートボブに丸眼鏡、ライトグリーンにホワイトのアクセントが鮮やかなミニのワンピースを着こなす、ちょっと意地悪そうな笑顔の女性。私は彼女のことを勝手に「ミスキーガール」と呼んでいた。

「はい、なんでしょう」

 私が応じると、ミスキーガールは腕組みしながらこちらをじっと見据える。

「小林の描いたわたしのエロ漫画、消したでしょ」

 私はその事実──ミスキーガールと私が同衾するエロ漫画描いて.ioのタイムラインにアップロードしたこと、並びにそのノートを消したこと──を隠していなかった。だから、私は深く頷いた。

「はい、消しましたね」

 私の返答に、ミスキーガールは腕組みしながら肘を指で掻いて、フンッと鼻で笑う。

「ビビっちゃったんだ、Fantiaの動きに」

「はい、ビビりました」

 私は額に汗をかいていた。私と同じくらい水滴で濡れたアイスコーヒーを一口飲み下して、私は姿勢を正す。ミスキーガールはいまだ腕組みを解かない。

「ここは、Misskey.ioで、ちゃーんと隠してたのに?」

 ミスキーガールの瞳は湖の底のように透き通って輝いているけれど、私はいま彼女の厳しい視線を受け止めきれずに、俯きがちに返事していた。

「はい、.ioにアップしてたのに、ちゃんと隠してたのに、です」

 そこまで言うと、ミスキーガールは腕組みを解いて、深いため息とともに、ボックスのソファに深く座った。

「まあ、いいけど」

 そして、ミスキーガールは反動をつけてソファから立ちあがり、向かいの私の耳元に唇を近づけて、言った。

「わたしは好きだったんだけどな」

 その吐息の湿度を耳たぶで受けた私は、身体中の血液が高速で循環するのを感じながら、貧血になりそうな脳でミスキーガールへの「弁明」を必死に練り上げる。

「私だって好きだった。精魂込めて描いたからね。でも、何と言うか、世界の流れに歯向かう勇気がないんだ。クリエイターとして弱いんだと思う」

 私の反論に、ミスキーガールはアイスココアのグラスを指で拭いながら、首を傾げる。

「別に皆んながみんな反抗したくてエロ描いてるわけでも無いでしょ?」

 彼女の疑義に、私はようやく自分でも腕組みして、言葉を探しながら返す。

「でも、みんな救いを求めてエロを描いている。性癖って個人の最も核となる救いなんだ。誰も傷つけずに節度を持って性癖に忠実であろうとするひとびとを、誰かが、多分大きな力で、潰そうとしている。それに対して私は、声を上げる勇気もない。そもそも強い性癖も持ち合わせない自分に、彼らと手を取り合って大きな力と戦う勇気もない。私はクリエイター失格だよ」

 そこまで言って、私はアイスコーヒーを一気に飲み干して、深く息を吐いて黙った。そんな私の姿にミスキーガールはとりたてて驚くこともなく、首を傾げる。

「まあ、いじけるのはいつものあなたの調子だから、早めに戻って来て、としか」

 そう言ってからアイスココアを一口、ミスキーガールは私に訊く。

「わたしとエッチしてたときのエロ漫画を描いてたとき、どんな気分だった?」

 試すような笑顔で訊くミスキーガールに、私は少し思案してから、言った。

「作業のあいだ、やる事の多さに辟易して、技術の拙さをずっと突きつけられていたし、体調もいつも良かったわけでは無いし、正直、辛いときもあった。でも」

「でも?」

 ミスキーガールの疑問符の視線を見つめ返して、私は真っ直ぐに答えた。

「結局はちゃんとネームのページ数を描きあげられた。君のお陰だと思う。大好きな君のお陰」

 私の言葉に、ミスキーガール数瞬黙ったあと、ゆっくりと破顔しながら、言った。

「分かってるなら大丈夫。小林はちゃんとわたしを性癖にしてるクリエイターだよ」

Misskey.ioのローカルタイムラインの雨空は薄暗い昼間から忍び足で夜へと更けていき、街路灯の光が雨粒を照らして表通りはきらきらと輝いていた。ミスキストたちは次の晴れを待ちながら、また今夜もモニターの前に座って自らを「救う」ために、創作に励むのだった。
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