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CW: 祖母が亡くなる日の思い出の話(※ゼン祖母が死ぬ描写あり)ちょびっとカヴェアルかも
虫の知らせというものだったのだろう。その晩、彼は何となく一人で眠るのが惜しくなって久方ぶりに祖母の寝室を訪れた。  アルハイゼンは聡明な子だった。頭の回転が良く、それでいて聡いが故に人付き合いに必要性を感じない――ある意味では人付き合いを苦手としている、と言っても良いだろう――子だった。歳の割には大人びており、早くに両親を亡くしたものの手のかからない、大人しく器用な子どもであった。最初こそ雷雨が窓を叩く夜は祖母のベッドに甘えに来ていたが、それもいつの間にかなくなっていた。まだ手足は細いし背も低い、それでも雷を怖がるような幼子からは脱却したと言うように、彼は当たり前のように独り寝の夜を重ねていった。  そんな彼が祖母に同衾を求めたのは、何となくのことだった。外は晴れ、入眠を脅かすような物音はない。別に昼間に恐怖を想起させるような本を読んだわけでもないし、耐えきれないほど冷え込んでいたわけでもない。ただ何となく、今夜は共に寝たいと強い衝動に駆られたのだ。  その頃には彼の祖母は耳が遠くなっており、何を話すにしてもアルハイゼンがつま先を伸ばし、彼女の耳元にゆっくりと囁くようにする必要があった。アルハイゼンにとって、祖母との会話はどれも大切なものだった。何一つ捨て置けるものなどない。アルハイゼンの意志を尊重し、彼の成長を素直に喜んでくれる祖母に伝える言葉は全て本心だった。  アルハイゼンは日付が変わる前に眠るようにしていた。だがその夜は眠るのが惜しくて、とりとめのない話を延々と続けていた。祖母はうつらうつらしながらも「うん」「そうだね」「うんうん」と相槌を打ちながら、アルハイゼンの言葉一つ一つを噛み締めるように聞いていた。  だが子どもの身体で徹夜など難しくて仕方のないことである。アルハイゼンはいつの間にか眠ってしまい、そして一人きりの朝を迎えた。最後の最後までアルハイゼンの話を聞いていた祖母が頭に乗せていた手は、全てを語るように冷えてしまっていた。  アルハイゼンは、その頃の癖が抜けていないことを自覚している。大切な言葉は、誤解されたくないことは、伝えたい意図があるものは、きちんと耳元に近づいて、わかりやすく伝えなければならない。そうすれば、通じるのだから。  そんな思い出話を、どうやらアルハイゼンは半分寝た頭で同居人に語っていたらしい。アルハイゼンは昨晩の朧気な記憶を引っ張り上げ、彼の言葉を思い起こす。 「まあ安心しなよ。僕はそんなことしなくても、君の声を聴き逃したりはしないさ」  そう言ってくれる君だからこそ、確実に届くようにしたいのだ。果たして自分はそう言ったのか、それとも言えずに寝てしまったのか。その記憶がないアルハイゼンは、じわじわと込み上げてくる恥ずかしさを誤魔化すように二度寝を画策するのであった。 #カヴェアル
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