検索

CW: #二次創作 #喫茶店Misskeydesign 私と、喫茶店Misskey.designの話
 Misskey.designは住宅街のようで、ミスキストたちはそれぞれに住居を構えて自作に没頭している。西洋風ファンタジーのようなロココ調の城や、バウハウスのデザインしたような無機質なデザインの住まいや、まるで廃病院のような建物まで、各々が自分の世界観の住居をもって暮らしている。
 Misskey.ioに比べると.designの空の移ろいは「リアル」と似ていてずいぶんと自然だ。昼の空はコバルトブルー、夕焼けは朱く、夜は墨を流したように黒い。「リアル」と違うところと言えば、太陽が少し橙色をしているところだろうか。
 そんな閑静な住宅街を散歩していると、一軒の喫茶店を見つけた。戸建て住宅のように主張しない佇まいの建物が喫茶店だと分かったのは、表に出したチョークボードに「喫茶店Misskey.design」とだけ書かれているのをたまたま見逃さなかったからだった。
 まるで人の家に黙って侵入するかのように、恐る恐るドアを開くと、中はれっきとした喫茶店然としていて、客たちがまばらに座るテーブル席は木目調の自然なデザインで、カウンター席も綺麗にニスが塗られた一枚板を使っていた。
「いらっしゃいませ」
 カウンターでコーヒーを淹れていた、この店のマスターらしき男性がこちらに声をかける。私は少し吃驚した。なぜ.ioの人間がここにいるのだろうか、と。
「どうされました?」
 よく見ると、.ioの人間に生えているはずのネコミミがない。きっと別人だと確信して、私は彼に答える。
「いえ。貴方にとても似ている人を知っていたもので」
「ああ。それ、ネコミミ生やしていたでしょう」
「ご存じなのですか?」
 私が訊くと、マスターはフッと鼻で嗤って言う。
「もちろん。私の双子の兄です。すっかり.ioの運営にほれ込んでネコミミを生やしたのですから、笑い者ですよ」
 その言いぶりに、私もつられて笑ってしまう。
「手厳しいな」
「どうぞ、お座りになって。なににされます?」
 カウンター席をうながされ、立て掛けられたメニューを見ると、コーヒーがあった。そう、さっきから店内を満たすコーヒーの薫りがとても気になっていたのだ。
「最近、コーヒーを飲んでなかったな」
「うちの自慢のブレンドですよ」
 そう言って、マスターはサイフォンで丁寧にコーヒーを淹れてくれた。私はそれをブラックで飲む。
「ああ美味しい。久しぶりに飲んでる。Misskeyでは初めてじゃないかな」
 私が顔を上げて言うと、マスターは首を傾げて微笑む。
「兄がコーヒーを出さなくなったと聞いて、やり過ぎだなと呆れています」
 そんな会話をして、窓の外を見る。人通りはまばらだが、人の息吹は確かにある。そんな風に感じて、私は独りごちるように首を振った。いや、私は.ioの喧騒に慣れ過ぎているのだろう、ひょっとしたら.designの落ち着いた街並みのほうが人間的なのかもしれない。
「どうして.ioから.designに?」
 そうマスターに訊かれて、私はカウンターに振り向き、答える。
「いえ、完全に居を移したわけではないのですが、こちらにも作業場を作ったら、もっと面白いかなと思って」
 そう言うと、マスターは満面の笑みで深く頷いた。
「すばらしい。あなたの作家としての躍進を期待しています」
「作家だなんてそんな。私はただの怪文書書きですよ」
 そう返した途端、マスターの笑顔は鋭い視線に変わり、私を冷たく見下ろした。
「その怪文書、という言葉。.designではおよしになったほうがいい。ここにいる物書きは自分の文章に誇りをもって書いている。怪文書なんて自分の作品を卑下するのはもってのほかです」
 その威圧感に、背筋が泡立つのを感じて、私は慌てて頭を下げる。
「すいません」
 そう返すと、マスターはまた穏やかな笑顔になった。
「いいんですよ。すくなくとも.ioでは怪文書を、.designでは作品を書きましょう」
 怖いところがあるが、正直で、表情豊かで、こちらとしては安心してコミュニケーションできる人だなと思った。
 それほど多くはないが、テーブル席に座る人々は、おそらく.designの住人であろう、やはりタブレットで自分の絵を書いたり、テキストを書いたりしている。そしてときどき.ioと同じように、リアクションをやり取りしていた。
「ここは.ioに比べて静かですね」
「みな自分の創作に勤勉ですからね」
 それは確かだった。もちろん.ioの創作者が怠慢だとは言わないが、もっとこう、.ioは作者自身のキャラも作風もクセがすごい。それに比べると、たしかに.designの人々には、ひたすらに自分の創作を極めようとするストイックさを感じた。
「少し心配になってきますね。ここで私、やっていけるかな」
 コーヒーを飲み干して私が言うと、マスターはフフフと笑ってお替りを注いでくれた。
「まあ、ゆっくりやるといいでしょう。ここは.designですけど、それ以前にMisskeyです。貴方の創作にはきっと素敵なリアクションがつくでしょう」
 喫茶店の窓に夕日が射しこんで、そろそろ夜になる。ここはMisskeyだ。これから.ioに行って騒いでもいい、.designで自作に没頭するのもいい。私たちはFediverseのなかで、自在に居場所を選んでいいのだ。
#喫茶店Misskeydesign
返信 0 · Renote 0